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プロジェクトのきっかけ
当サイトの手話フレーズ動画は、その多くが2008年から私がろうのお年寄りに対し行ったインタビューや、おしゃべりの記録からピックアップしたものです。ろうのお年寄りにインタビューを行った当初の主な目的は、台湾手話の昔の語彙、語源にさかのぼると共に、動画を通じて台湾手話の有様を忠実に記録しようというものでしたが、将来的には台湾手話のコーパス研究としても利用できるのではないでしょうか。
こうした目的があったため、当初インタビューを行うにあたり、対象者を2008年当時70歳以上で、日本統治時代にろう学校で教育を受けていて、手話を主なコミュニケーション言語とするろう者としました。さらに会話は全て手話で行い、文字の使用を極力避けました。話の内容の多くが、インタビュー対象者の歩んできた道のりや彼らの日常生活で語られる様々な話題がメインとなっていますので、対象者の語彙をできるだけ幅広く収集できていることが期待されます。
最終的に出会った主なインタビュー対象者は、台中大甲の蔡一興さん、何春貴さんご夫婦(当時73歳、71歳)、台中大甲の李栄華さん(当時77歳、故人)、台南白河の李仰豪さん(当時77歳)、元のお住まい屏東東港から後に台北に移られた陳茂森さん(当時80歳、故人)です。
インタビュー対象者の言葉をできる限り完全に表すため、当サイトでは、多くのオンライン手話辞典サイトのように手話単語をメインとしたものではなく、フレーズを主体に表示しています。こうすることで、より完全な手話の有様を映し出し、単語に加えて同時に台湾手話の文法などの部分も示していければと思います。
サイトの内容は、主にインタビューで集められた動画がメインとなっており、全ての語彙、文法などは動画の内容に基づいています。つまり、インタビュー対象者の話に登場しなかった語彙は、収録されていません。そのため、当サイト上では現在よく使われる手話の語彙がなかったり、あるいはこちらでまとめた文法が、現在巷でよく見かける手話教材の内容に言及していなかったりしますが、決してそのような表現を良しとしないとか賛同できないということではありません。単に集められた動画内に例文として登場しなかったため、差し当たって未収録としただけです。当サイトをご利用の方は是非この点にご注意ください。
動画の主な意義についてお伝えしたいのは、決して「これが台湾手話の本来の姿で、標準的な台湾手話だ」ということではないということです。より正確に言うと、こうしたインタビュー記録の意義は「台湾のある時代、ある地域におけるあるろう者が使う言葉のあり方」を示すことです。視覚言語として、手話はかなり地域的な言語ですし、台湾というこの小さな島には、北部・中部・南部にそれぞれ慣用的な手話の語彙があります。動画記録に見られるのは台湾手話の一部であって、全てではありません。ですから、インタビュー対象者の言語を台湾手話の唯一のスタンダードだとしてしまうのは非常に不適切なわけです。
現在まとめた動画は、インタビュー記録のごく一部の部分のみになります。サイトでの表示法も初の試みであり、内容は今後どんどん更新していく予定です。ご利用される各方面の皆様には是非忌憚のないご意見をくださいますようお願いいたします。皆様のフィードバックを通じて、当サイトがより多くの機能を持てるようになり、また台湾手話に興味のある方に、その素晴らしさをより一層ご理解いただければ幸いです。
手話スクリプトの記号説明
∩ 左右の手が同時に異なる言葉を示すことを意味する。
/ フレーズの短い一時停止の意味。中国語のコンマに相当。
[ ] 表情、口の形、動きなど、手以外のサイン。例:[眉をひそめる]。
++ その単語または動作の重複。
@( ) 人称の位置を示す。例:@(3)七十は、「七十」という手話が3人称の位置で表現されるということ。
@ 類別詞、形により物を示す。
例:@建物の壁、ここで平たくした手のひらと腕全体で文中の「建物の壁」を示す。
# 空書(空中や手のひら、平らなところに字を書く)。
!この動作が物の形を形容したり、動きの真似をしていることを示す。まだ固定語彙とは言えない。例:!靴磨きクリーム。